菊花賞
昨年は運良く、京都競馬場の改修前最後の菊花賞に行く事ができ、コントレイルの3冠馬誕生を見る事が叶った。
今年の菊花賞は、WINSで馬券を仕入れ自宅での観戦となった訳だが、昨年以上、いや、自分が今まで見た菊花賞でも最高のレースだった。
皐月賞馬もダービー馬も不在の、牡馬クラシック最後の関門。春の実績馬と夏の上がり馬の対決図式が菊花賞の背景にはあるのだが、タイトルホルダーは前者のケースになる。
弥生賞優勝でクラシックに名乗りをあげ、皐月賞で2着。期待されたダービーは6着に敗れたものの、悲観する内容でないものだったように思う。
父ドゥラメンテは二冠を勝ち得たものの、故障でターフを惜しまれつつ去った良血馬。種牡馬としての活躍も期待されたが早逝してしまった。
今回、コンビを組んだ横山武史騎手は弥生賞で初騎乗し逃げ切り勝ちを収めた相棒。勝利ジョッキーインタビューでも、その素質を認めていたが、皐月賞本番ではお手馬のエフフォーリアがいるため、口を濁らせるところもあった。
前走のセントライト記念で再び手綱をとり、1番人気に推されるも、直線で前が塞がり万事休す、13着に敗れてしまった。
ダービーでは僅かなハナ差でエフフォーリアの二冠は果たせず、今回のトライアルも人気を応えられず不完全燃焼だった武史騎手。
人一倍悔しがりで、どんなレースでもそう感じると雑誌の記事にあった。
スタートでハナを奪うと、折り合って主導権を握る。ワールドリバイバルは控えて、単騎の形。終わってみれば、この時にしてやったりだったかも知れない。
何せ3,000mの長丁場、逃げ切りというのはそう易々と決まらないのがセオリーだ。ただ、腹を括った、と見たこの戦法が他馬を大いに幻惑させたのかも知れない。隊列が縦長の有力馬が中団より後ろとなれば、仕掛けどころ一つでガラッと順位が変わってしまう。
単なる遅いペースなら、ルメール騎手が向正面で捲り加減で前に出るが、ガッとはポジションを上げては来なかった。武史騎手が作り出したラップの妙に各馬がハマりつつあった。
阪神の内外の差は此処にある。
スローで最後の直線の差し脚勝負になりやすい外回りと、小回りコーナーが先を行く馬の粘りに優位な内回り。
ましてや長丁場はコーナー6回で、短い直線に急坂が待ち構えていれば、仕掛けどころが難しい筈だ。直線でさらに突き放す余力、中盤ペースを落としたと言えども、単に余力だけでは5馬身の差をつけられない。余程、馬の性格や資質をジョッキー自身が感じ、信頼していなければ出来るものではないだろう。
大舞台での度胸、と言うのは容易いが、武史ジョッキーは乗り鞍のひと鞍一鞍を全力でものにしているからこそ、思い切った勝負を打てる力を培ってきたのだろう。
クラシック2勝の堂々たる結果でも、おそらく本人は先を見据えて次の戦いへシフトしているだろう。この先の活躍が楽しみで仕方がない。
良き馬に巡り会う、騎手が成長するきっかけのひとつである。
最近の活躍が目覚ましい松山航平騎手も、デアリングタクトとのコンビで無敗の牝馬三冠を果たしたのは、少なからず自信のもとになっているはずだ。若手が頑張るからこそ、ベテランも腕ぶす。
4,300勝をあげた武豊騎手しかり、最年長重賞勝利を達成した柴田善臣騎手もまたしかり。
子息が活躍している岩田康誠騎手、横山典弘騎手も息子には負けないとガッツを示したレースを見せてくれている。
秋競馬はこれからが本番、人馬ともに無事で活躍出来るよう願うばかりだ。
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